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「エッ、もっ、もう一カ月経ったのかぁ〜」
月に一度、WTの野村編集長から、ルンズ通信の原稿締切日の連絡をいただく。
その時、我がアタマの片隅で爆発するように出てくるコトバがこれである。
不思議なことに、そのときいつも、もう一人の自分がサッと分身し、本人のアタマ??(ちょっとヘンですけど…)のなかを冷静に観察している。
今回もそうだった。
もう一人の自分が見ている[本人のアタマ]は、中身が空っぽのスイカ。そして二つの穴が横に並んであいて、その下に少し大きめの穴があいている。
なんだ、なんてことはない、むかし子供のころによく遊んだスイカ提灯だ。
八月のお盆が近くなる頃の子供の楽しみの一つは、スイカ提灯だった。
強烈な日ざしで空気が白っぽくみえる夏の日の午後。陽炎の立ちこめる道をユラユラ揺れながらスイカ売りのおじさんがやってくる。
リヤカーに山盛りのスイカを乗せて家々をめぐっていく。
戸口からでてきたオカミサンたちが、前掛けで額の汗をふきふき、ポンポンとスイカをたたきながら、おじさんに、口々に、
「甘いかい?」と聞く。
おじさんは、かならず、
「ああ、甘いよ」と、言う。
いっもかならず交わされる、判でおしたようなその会話を聞きながら、
(甘くないよ、って言うわけないじゃないか)
と子供ごころにいつも思っていた。スイカを買うときの大人のクセなんだなと思った。
オカミサンたちのなかに、たまにわたしの母も加わってスイカを買ってくれた。
縄で縛った少し小振りのスイカを井戸につるして冷やす。

夏の終わりに。

タ方、父親が仕事から帰って、やがて丸いチャブ台で家族そろってのタ餉がすむと、母が井戸からスイカを上げてきた。
チャブ台の上にまな板をおいてスイカをのせる。頭のヘタの部分を包丁でスパッと切り落とす。
切り口から美味しそうな紅い身が見えると子供らはきまって歓声をあげた。
大きめのサジ(昔はスプーンなどとは言わなかった)で丁寧に中身をすくう。
子供たちは胸をワクワクさせながら、母の手もとから、子供たちの人数分と父母共用分の六枚のお皿に移されていく、紅いスイカの行方を目を細めて追う。
皆、舌鼓でスイカを食べる。いつもほんとに甘かった。穏やかなやさしい甘さだった…。
食べ終わるとさあお待ちかねのお楽しみ。
父が小刀を持ってくる。立派な柄のついた小刀だ。ナントカ…ノカミと筆で書かれたかすれた字がみえた。
きれいに中身をくり抜かれたスイカを父はそっと膝におき、小刀をスッスッと動かすと目と口と耳があいていた。
底に釘を一本立て、頭の切り口の縁に三本のヒモを通し、そのヒモを少しのばしたところで一本にまとめ、少し長めの篠竹をくくりつけた。
底の釘に火のついた一本のローソクを立てると、提灯になった。
子供たちは篠竹にぶらさがるようにみんなで持ち、もう目を輝かして、とっぷりと暮れた夏の夜の闇のなかに出ていった。
スイカ提灯の目や口や耳から淡い光が漏れる。
スパッと切られたあたまの切り口からは、一番大きな光があふれ、子供たちの顔をホワァと照らしだしている。
あっちの家からもこっちの家からも同じような光が揺れて、来る…。
と、ここまで懐かしい思い出にひたっていたら…
突然、「バリバリ、ドッカーン」と雷が。コリャいけねえ、編集長のお怒りか…。

 

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹

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ルンズ通信は「渡良瀬通信」で連載中です。
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