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カラスが来ない。
去年の今ごろは熟したぶどうの実をめぐり、お互い智恵とチカラの熾烈な攻防戦?を繰り広げたものだが、今年はただの一羽も姿を見せていない。
ルンズの畑は日照時間が長く太陽光線の量も豊富だ。だから毎日はたけ仕事に精出すと真っ黒に焼ける。
去年は、いつも行く村営温泉の人に、
「赤城村で一番黒い!」と言われた。が、今年はシラーと、そんな風もない。
ご多分にもれず、赤城のわが畑も今年は冷たい夏だった。最近になってようやく少しだけ太陽の光が戻ってきたけれど、もはや今年の夏はかえってこない。
ぶどう達も一所懸命ガンバッテくれてはいるのだけれど、なんたってお天道様のお恵みをいただけないのだから、どう仕様もない。
朝おきると先ず畑だ。去年とは正反対の気持ちでカラスの姿を追う。
今朝も一羽もいない!
・・・ ・・・ ・・・。
(カラスに見放されるようじゃー、しょうがねえなァ〜)
そう思いながら、ぶどうの精気と土が発散する、爽やかで濃密な空気がいっぱいの畑を巡る。
カラスは来なかったけれど、シカが来た。
姿は見ていないのだがフンを見つけた。形も大きさもウズラ豆によく似ている。それがバラバラと大人の手のひらくらいの大きさ、というか範囲に散らばって落ちている。それが1メートル四方の中に2〜3カ所ある。比較的小屋に近い場所だ。
何を食べたのだろ、と思ってぶどうを見たが、食べられたらしき跡はない。

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翌朝まだ薄暗いうちに起きて、ソッと畑を見に行った。
すると何か鳴き声のような声がする。
畑の北、120メートルくらいのところにある林の中で、「ピユーイ、ピューイ」と何かが鳴いている。
(あの鳴き声は昔どっかで聞いたな、確か…シカだな、と思った)
その日の作業後、温泉に行って湯に浸かりながら、さっそく村の長老に話したら、
「それはシカだ。オスがメスを呼んでいるんだ」と、教えてくれた。
すると誰彼となく声があがった。
「そうかい、アンタンとこも出たかい」
「今、あっちこっちで出てるってなあ」
「ウワサじゃ肉食ってるヤツもいるらしいぜ」
(エッ、エッ、肉なんか食っていいの〜?)
「そう云やぁ、○○がこないだアンタンとこのすぐ上で、クマがワナにかかったって言ってたな」
クマ!?クマだって!?ウチのすぐ上だって!!!
「そりゃあクマった」なんてダジャレこいてる場合じゃねえゾ。どうすりゃいいんだ?
幸い、その後シカは来ていない。もちろんクマも来ていない。
つい先だって、ぶどうの垣根に張ってあるワイヤーに巣をつくっていた小鳥が三羽、巣立っていった。物事に詳しい人に聞いてみたら、ジュウシマツかなんからしい。
そのちょっと前はヒバリが巣立っていった。ルンズの畑はオメデタいっぱいだ。
畑のぶどうは、今のところイマイチだけど、おてんと様さえ出てくりゃきっと大丈夫。間違いなく美味しいぶどうが実るだろう。
ぶどうを信じ、明日を信じ、信じる自分を励まし励まし信じて、一心不乱、精一杯に毎日生きる。
(そうすりゃいつかはなにかが見えるだろ)
ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹
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