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このところひときわ星空が美しい。毎夜のように星明かりや月明かりがうっすらと小屋に充ちる。
夜半に目覚め、何となくうす明るい小屋の天丼を眺める。いつの間にかとりとめのない想いに耽っている。(星夜雑感…)

やっぱり近頃の天候はヘンだよ…。夏の低温長雨。そして秋にも長雨。12月になって、師走というのに気温は下がらず、初雪は前年に比ベて1ヵ月半も遅かった。
しかしやっと降った初雪は忘れられないことになった。
午前中、強い降り空時続いた。だが、すぐに南の雲に切れ間ができた。その瞬間、サァーと一条の陽光が降る雪を射し貫いて、虹が。
雪に掛かった見事な虹。生まれて初めて見た。雨に掛かる虹よりキメは荒かったが、背後の雪山の風景と二重写しに映えて、なんとも言えぬ美しさだ。
積雪は4センチほど。しかし午後からの気温の急上昇でその日のうちにほとんど溶けた。そしてまた暖かい日が続いた。
初雪から4日目。こんどはドッカーンと降った。村の古老の話では30年ぶりの大雪だとか…。
以前にもこの通信で書いたが、このところの天候は極端すぎる。
百姓の願いは、たった一つ。天候の安定だ。このところの不安定な天候が〈地球環境の変化に伴うもの〉などではなく、単なる一過性の現象であってほしい…と祈らずにはいられない。

冬になって、一人で暮らす開拓小屋の毎朝の楽しみは、朝日の差し込む瞬間だ。
日課の体操や食事も終え、畑に出る身支度も整ったころにその瞬間はやってくる。
すっかり葉の落ちた木々の梢を縫って、ほとんど平行ともいえる低い位置から、柔らかいオレンジ色の光線が、静かにスッと差し込む。
小屋の南壁にあけた窓の、東側の端すれすれから入った陽光は、たちまちのうちに小屋中に満ちる。溢れるような新しい光につつまれると、ただそれだけで幸せな気持ち一杯になる。この瞬間が、わたしはとても好きだ。

「冬の音」を聞きながら、あせらず、ゆっくり― このところ氷点下の朝が続く。困るのは水道とトイレ。どちらも凍結防止が絶対課題だ。
水道は、凍結の季節になると蛇口ではなく、地下にある元栓で水を出したり止めたりしている。
元栓は寒冷地仕様になっていて、普通では凍りにくくできているのだが、赤城では通用しないようで、凍結防止にはもっぱら水の出しっぱなしでいくよりほかない。
毎晩、夜から翌朝にかけての温度を予想して、出しっぱなしの水の加減を決める。が、これがなかなか難しい。出し過ぎればもったいないし、かといって少なくした場合、予想以上に気温が下がるとそのまま凍結、ツララになってしまう。こうなるとその朝は大変だ。
今朝も昨タか宣ずっと出しっぱなしになっている(ウ〜、水資源がァ…水道代がア…)と気になるが、しょうがない。
ただこの方法には…実は慰めがある。冬の夜の楽しみといってもいいだろう。
赤城の冬の夜は、大抵、北風が吹き荒んでいる。でも時々、気圧の配置が変わるようなときにピタッと風が止み、静寂のときがある。楽しみはその時だ。
微かに、「コロコロコロ…」とも、「シャロシャロシャロ…」とも「トロコロトロ…」とも、なんとも形容しようのない優しい円やかな音が聞こえてくる。
出しっぱなしの水道の水が、流しのあちこちで適度に凍って、きっとそこが水琴窟状態になっているのだろう。そこから聞こえてくる<冬の音>なのだ。
何気なく夜中に目覚め、その「音」を聞きつける。掛け布団にアゴを埋め、うっすらと星明かりの小屋の天井を眺めながら、何とはなく聴きいるひととき…。良い。山の畑の小屋暮らしも、なかなかのものだ。

年は明けた、が、昨年もまたやり残したことがたくさんあった。思うように目標が達成できず、こころは苛つく。
が、最近は、別のこころの声も闘こえる。「急ぎなさんな…。急ぎなさんなョ…」
もっと(ゆっくり)生きろ、ということか。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹

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ルンズ通信は「渡良瀬通信」で連載中です。
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