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 ゴールデンウィークも今日で終わる。比較的好天気の続いたGWも、残り二日は雨になった。降る雨に訪れる人もない畑は、ひっそりと静まりかえっている。
(今年の天候はどうなるのだろう?)
 開拓小屋の軒先に一人佇み、雨に煙る畑を眺めながらそればかりを考えていた。
 ルンズの畑には、北の端と、真ん中東と、南の端に、それぞれ一本ずつの桜がある。三本とも種類は別で、花の時期も咲き方も微妙に違う。
 北の桜は樹齢数十年と思われる山桜。大人が目一杯、手を伸ばして抱えても、半分も抱えられない大きな樹だ。
 里の春が、山へとさしかかった頃、小さな若草色の葉がひょんとでて、やがてその若葉にくるまれるように、ピンクがかった白い八重の花が、こんもりと咲く。
 真ん中東の桜は、せいぜい十年くらいの若木。根元から大人の男の腕くらいの太さの幹が五本ほどスッと伸びて、いわゆる株立ち。
 樹肌は若桜特有のスベスベした横縞模様が美しく、秋田の〈曲げわっぱ〉を思い起こさせる。
 花が面白い。小さくてトランペットの形をしている。大きさ(長さというか…)は、約1センチ5ミリ程で、花の直径は5〜6ミリ。
 全体の半分から三分の二は赤緑色のガク部分で、その先にちょこっとラッパのような花が開く。色は薄ピンクがかった白。とても清楚だ。花弁は五枚で円く、正面から見ると、家紋の〈梅鉢紋〉に良く似ている。
 南の桜は樹齢四〜五十年の染井吉野で、どこにでもある…と言ったらナンだけど、まァそういう桜だ。
宙に願う  しかしこの南の桜が、付近の農家にとって、長いこと大事な役割を果たしてきた。
「花が咲いた」「どのくらい咲いた」「いつ散った」など、桜の開花の様子を畑作業の目安にしてきたのだ。
 その桜が今春は早々と咲いた。
 この時期になると毎日桜の様子を窺いながら畑仕事をしているが、ほとんど気がつかないくらい、アッというまに咲いてしまった。
 例年にない早さだ。そんな折り、
〈最も暑い4月(東京都心)〉という見出しの新聞記事が目にとまった。
 東京、横浜、千葉、熊谷の月平均気温が観測史上最高を記録したとのこと。前橋は観測史上3位の記録だったそうだ。日照時間も平年を大きく上回った、とある。
(なぁるほど…それで桜の花があんなに早く咲いたのかァ)
 日々の体感覚で、温度も日照時間も常とは違うことはわかっていたが、これで納得した。
 一方で、漠然と感じていた不安が、現実味を帯びて甦ってきた。
 この数日間、ブドウの芽の動きに、(ちょっと遅い…かな?)と感じていた。
 種類の相違にかかわらず、植物の成長度合いには整然とした一体感がある、と自分は考えている。
 なのに今年のブドウには、桜の開花や周囲の木や草花の動きに比べ、微妙な違和感があるのだ。
 農業日誌の記録を調べた。比較すると10日位の差がある。
 原因として思い当たることは、日照不足によるエネルギーの蓄積不足。
 曇天や冷たい雨の日が多かった昨夏は、農業にとって厳しい年だった。
 天候不順はその年の収穫に大きな影響を与えるけれど、果樹栽培などは、翌年までもその影響を引きずる。
 日照の不足で充分な光合成ができず、エネルギーの蓄積が不足していたに違いない。その結果が今春の成長に影響している。
 4年目の今秋は、相当な収穫を期待している。どうか良い天候であってほしい。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹

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