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(毎月のこと、なんだから…なァ。)
(やっぱッ、ふだんから…話のネタをためておかなきゃ…なァ。)
 今を盛りと鳴き競う蝉しぐれの朝。こっくりとした木立の陰影や、なんとはなく涼しく肌をなでる風の儚さに、この夏、最初の秋を感じた。
(フゥー)
 猛暑続きの毎日なのだから、立秋を前にしたこの朝のこの感覚は、感激の朝…のはずなのに、タメ息ばかりがでる。脳裏には毎度おなじみの反省の念が、グダグダと迷走している。
「永澤さん。来月はお盆なんで、締切りは少し早め、ということで…」
「ハイ。わかりました」
 こうした編集長とのやりとりではじまった今月のルンズ通信の原稿書き。
 ワープロと向きあって、もうすでに3時間。正直…参りました。ぜんぜん書けない。と、いうより、なんというか、これから書こうとすることの骨格、筋道がまるで組み立てられない。いやはや、本連載始まって以来の難行苦行である。
 思うに、暑さは、人間の思考回路を粉砕、もしくは粗雑、あるいは希薄にするようだ。
 連日の、体温を上回る暑さのなかで、草刈りだ、摘芯だ、ハーブ撒きだ、と、いそがしくやっているうちに、赤城の恵まれた太陽の光と熱をたっぷり浴びた自分の頭は、できすぎのスイカのようになってしまったらしい。
 通常の畑仕事は、体が覚えているのと、農業日誌や、漢方&ハーブ処方などの記録の読み返しでなんとかこなせるのだが、創造的なことが、からっきしダメになっている。そこの辺りの回路がやられたみたいだ。

ジャン・ジャ・ジャーン「ワイン美容液」誕生! 以前、くだんの編集長に、
「永澤さん、月刊誌なんだから原稿内容と発刊日との時差を考えて、できる限り新しい話を…ネッ」って、アドバイスいただいた。
 編集長に忠実で、しかも律儀な自分としては、この敬愛する編集長の期待に応えようと、自分の能力をはるかに超え、乏しい知識を絞りに絞って、出来はともかく、旬の話題をなんとか原稿に仕上げてきた。(ツモリ…だ)しかし…今日は、ダメ。ゼンゼンダメ。
 毎日毎日が猛暑続きで、畑全体が、畑をつつむ空気とともに、妙に白っぽく見える日がもう幾日も続いている。透明感溢れるその空間を、無数のトンボが群れ飛ぶ。このトンボがやがて真っ赤に変身し、アキアカネと呼ばれ、紅葉の布子のように乱れ飛ぶ日も、もうそう遠くではないだろう。
 この暑さが、自分の頭を必要以上に熟れさせてしまったのは確かで、そのせいで創造的作業が、今はからっきしダメなことはそうなんだけど、しかしじつは、それで文句なんか言えない。それどころか大いに感謝しなければならないことなのだ。
 今年のブドウはこのたっぷりとした太陽の光線と熱量、そして少ない降雨で、上々の出来具合いではないかと思もわれる。自分らブドウ農家はブドウを生産することによって生活の糧を得る。ブドウの上出来、不出来が、直接来年の生活を左右する。だからこの暑さは有り難いことで、いってみればこの暑さに食わしてもらっているようなものだ。
 と、そこまで考えると、「暑い!」なんて言ってられない。
〈モットモットアツクナレェー〉なんてことを叫びつつ、お天道様に感謝しなけりゃならないのだ。…と、いうことはブドウの上出来の年は、アタマの回路が再度壊れる可能性が大いにあるということで、これはちょっと困るなァ。しかし、だからといって冷たい夏でブドウが不出来になったりしたらもっと大変だからこれも困る。
 アタマを抱えて考えた結果、たっぷりの太陽を浴びても、熟れすぎないアタマに鍛えればいいんだ…と、気がついた。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹

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ルンズ通信は「渡良瀬通信」で連載中です。
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