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 赤城のルンズのぶどう畑は今や紅葉の真っ盛り。収穫を無事に終えたぶどうの樹々は、ゆったりとその身を休めているようにも見え、深い秋の陽ざしのもと、穏やかな美しい田園風景が展がっている。
 しかし、畑の北に聳える山脈の向こうでは、大地震の余震が今なお続き、多くの人々が不安を抱えつつ、不便な生活を強いられている。
 被災地と外部を繋ぐ飛行ルートがちょうど畑の上らしく、大型小型さまざまのヘリコプターが、終日、忙しげに行き交っている。ふだんは耳障りなヘリの騒音も、今回ばかりは頼もし気に響く。
 地震発生の時は、一日の仕事を終え村の風呂に入っていた。明日は収穫という前日の夕刻だった。
 収穫の手順を頭の中で反芻しながら、準備に手抜かりは…などと、思いめぐらし、手足を伸ばしつつ目をつむって湯を堪能していた。
 突然、ドーンという音とともに湯も身体もグラグラ揺れた。
 丁度その時、湯の中に勢い良く入ってきた人がいたのでそのせいで湯が乱れ、身体が大きく揺れたのかと一瞬錯覚した。が、建物の大きく動くのを見て、異変と覚った。
 続いて二度目の揺れが。これも大きい。誰かが「浅間山の噴火」だといった。「灰が降る」ともいった。
(収穫直前のぶどうに灰が積もる!)これは大変だ…と思った。もう、のんびり湯になど浸かっていられない。身体を拭うのもそこそこに、濡れた身体に無理やり衣服をつけ、大急ぎで小屋に帰った。

天災? 人災?  帰る道々浅間の方向を見やったが、噴火の様子は見えない。これは噴火ではなく、地震だとわかった。
 小屋では、低い二段の本棚なのに、中の本が倒れ、上に飾っておいた花瓶が落ちて床に転がっていた。
 すぐにラジオをつける。新潟で大地震が発生したとのこと。騒然としたスタジオの雰囲気がそのまま伝わって来る。
 小屋に着いてホッとする間もなく得体の知れぬ大きな濁り音とともにまたまた大きな揺れ。二度、三度と繰り返し揺れる。星明かり程度の薄暗闇の中で畑が波うっているのが見える。
 ふと、何気なく携帯電話の小さなランプ灯に気づいた。それは不在着信を示している。
 着信履歴を確認すると新潟の中村さんからの電話だった。今年春の美容液の開発以来、意気に感じ親しくお付き合いさせていただいている人だ。メッセージがあった。
「中村です。赤城は大丈夫ですか?」
 自分のところが大変だろうに畑を気遣ってくれていたのだ。着信時刻をみると5時58分。第一回目の地震の直後だ。すぐに電話したが不通。
 この後、数時間にわたって何度ダイアルしても繋がることはなかった。災害時に電話はアテにならないことを身を以て知った。しかしその後連絡がとれ無事を知ってお互い安堵した。
 今年の天は異常だと思う。梅雨はほとんど無く、そのまま夏の酷暑。度重なる台風の襲来。秋の長雨。そして浅間の噴火と、今度の大地震。
 これらは天災なのかあるいは人災なのであろうか。おそらくはその相乗現象であろうと、畑にいて思うことがある。天に唾することをこれまでに我々はやっているのだ。
 10月24日と11月3日の二日をかけて今年の収穫をすませた。
当初は昨年を上回る質と量だと予想したが、質はともかく、量においては予想を下回った。
 理解するには大きく複雑すぎる自然を相手の、ものいわぬ生き物相手の、農業は難しい。が、これが生業である以上、できるだけ相手に同化して理解を重ねるしかない。

(11月10日記)
ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹

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