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今日は立春。ついこの間お正月だったのに、早や一ヵ月余が過ぎた。 今年は雪の降る日が多く、去年の暮れからずっと畑の雪景色が続いている。何時だっ たかラジオかなんかでこの冬は暖冬と聞いたような気がしたが、聞き違えだったか。 雪の畑で毎日剪定作業が続いている。ルンズ・ファームの仕事始めは曜日に関係な く毎年一月四日。今年ももちろんそうで、次の日から作業にとりかかった。剪定する ぶどうの樹は約一万二千本で、順調にいけばあと一週間程、二月の半ば前には終わる 予定だ。 雪の畑での剪定作業は、時によって楽しく、時によって厳しい。 厳寒期とは云え二月に入ると、いつの間にか太陽の位置はずいぶんと高くなり、陽 の濃さも輝きもグッと力強さをます。夜明けの時刻にはそれほどの変化を感じないが 日脚は驚くほどに延びる。 どこまでも青い空が広がり、帆船のような雲がいくつかポッカリと浮かぶ空の下、 風もなく静かで長閑な日和の中で、ポッツン、ポッツンとぶどうの枝を切る乾いた音 が響く。太陽の、雪に反射する光が眩しく、輻射熱で全身が汗ばむ…。こんな時の剪 定作業はほんとうに楽しく極楽で、よくぞファーマーになったもんだと口笛のひとつ も出る。 反対に、鉛色の雲が天のフタのように空一杯に重く垂れ込め、天地に轟くほどの情 容赦もない季節風に吹きっさらされる…なんて日は地獄だ。強い風に吹き飛ばされて くるのか、自分の上の空から降っているのか、目といわず頬といわず、礫のように叩 きつけてくる吹雪の日は、手足も凍る。 ![]() |
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小雪舞飛び 凍える手足 剪定の日々は いつまで続く 秋の実りを 宙(そら)に願って ああ今宵も ルンズのワイン この詩(と、云う程のものでもないが)は、去年の秋新潟に出張した車の中で、す らりと自然に出てきた。 仕事とはいえ久しぶりのドライブで、とても気分が良く、小さなハーモニカで童謡 や唱歌など思いつくままに吹きながら走っていた。 早朝に赤城の開拓小屋を出発し、三国峠を越え越後平野のとっかかりあたりで、国 境の山から昇る朝日に道路の先の風景がピンク色に染まるころ、「スキーの歌」のメ ロディーに乗って突然言葉が浮かんだ。 意外なことでビックリしたがすぐに車を止めメモをとった。すると次々に言葉が繰 り出て、春夏秋の作業をうたった五番までの詩がその場で出来上がってしまった。初 めての経験だが、じつはとても気に入っている。 とは云え、実際の作業中には歌などとても口ずさんでいられない。どの枝を残し、 どの枝を切るか、来年使う枝はなど、それぞれに違う樹を観て樹と相談し判断する。 樹の数は多いし、時季の間に終わらせなければならないから、一本の樹に一分以上 の時間はかけられない。集中力と緊張の連続である。 さて、立春がすぎれば日毎に暖かくなる。これがとても楽しみだ。 自分は厚着が嫌いで冬と夏の衣服の差があまりない。木綿のTシャツと木綿の下着、 木綿のくつしたは夏冬通して一年中同じもの。 冬の始めはTシャツの上にフリースを着る。厳冬期になるとスーパーで買った羽毛 入りのジャンパーをTシャツの上に着て、首にオレンジのネッカチーフを結ぶ。作業 パンツは混紡の薄いキルティング入りのものに穿きかえる。くつしたはそのままで夏 と変わらない。 そんなわけで衣服の枚数的には夏と冬とで一枚しか違わない。ネッカチーフはおま け。 だからひと冬で幾日かは、寒くてならない時がある。それでも身体を束縛されるよ うで重着ができない。そんな時は必要以上に大きく身体を動かしたり、足踏みしたり して我慢しながら凌ぐ。 やがて春が来ると、その分、とてもいい春が来る。 ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹 |
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