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赤城の開拓小屋の窓は、榛名山と真っ正面に向き合っている。この窓からは、榛名を中心に、日本の名だたる山々が見渡せる。 畑で作業の合間に見る景色ももちろんだが、小屋に居る時の、朝な夕なの窓からの眺めは、「見事」としか言いようがない。 ついこの間までは、冬枯れの寒色の中に、遠く白銀の峰々が輝いていたが、今はその白銀も斑になった。高山にも遅い春が巡り、氷雪も溶けだしたのだろう。 乾いた空気もずいぶんと潤いを増したようで、景色全体に霞がかかり、今までのように、透き通るように見える日も少なくなった。季節は確実に変化している。 遥かな峰々や遠くの山村は、これからだんだん見えにくくなるけれど、その代わりに、近くの、隣組とでもいえるような山々の七変化のような、日々のたたずまいの変わりようは、微笑んでしまうくらいに楽しい。 いつだったか畑に遊びにきた親子の、五つ六つくらいの男の子が、お母さんに言っていた言葉が忘れられない。 「お山がふくらんで笑っているよ」 透き通るような透明感の中に広がる景色は、景色を構成する線の一本一本が際立ち、観光地のポストカードのように、隙のない美しさだ。が、春の霞のなかに、線の輪郭が少しぼやけて膨らんで見える新緑の景色も、新しい生命の躍動感に溢れ、これもまた何とも云えぬ美しさ、愛らしさがある。 自然はすごいな、と思うことはいろいろあるけれど、特に春の自然の色は尚更と思う。 夏でも秋でも、(当たり前だが)自然は総天然色で様々な色があるが、それは春からの変化である。春の色は冬枯れの寒色から発生した、まったく新しい、命の色だ。 ![]() |
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つい先日、息をのむほど美しい光景を見た。 前夜からの強い風も、ようやく穏やかになって(さあ、今日もがんばるぞ!)と思いながら、小屋のデッキから眺めた景色が物凄い迫力で美しい。なんとも複雑な色の数々が幾重にも重なり合い、到底、表現できないほどの色彩の輝きと奥深さを見せている。大気が何かの加減で、複雑なレンズのような役目をしたのかもしれない。 思えば、最近は、身の回りに美しいと思う色が、あまりない。 日用品や衣服なんかも、みな同じような、原色か原色にちかい色使いしかしていないように思う。何より様々な素材の持つ自然の色などは、ほとんど減多にお目にかかれない。 その一因は、「猫も杓子も有名ブランド」といった世の中の風潮にもあるだろう。 優しい色、楽しい色、強い色、穏やかな色、賑やかな色、艶やかな色。ついこの間までは、そんな様々な色達に囲まれて、生活していたような気がする。それも特別に意識することもなく、自然に、程よいバランスで周りに散らばっていた。見える世界に暖か味があった。 生活に手間ひまのかからない、簡易とか、安易とか、便利とかが重宝される現代、深い想いのある色使いなどは斟酌されなくなってしまったのか。 色は、人間の琴線に様々な想いを働きかける。その色が、メッセージもなにもない、無機質で安易な色ばかりになってしまったら、その中で生活する人間の琴線は、いったいどうなってしまうのだろう。 琴線は、人間の、人間としての心そのものである。命よりも大事な、心そのものである。 人間は、自らの琴線に働きかける、自らの感情が、希薄になったとき、それは悲しいことだと認識しておいたほうがいい。 最近の日本はおかしい。変だ。と、感じているのは自分だけではないだろう。色はもちろんのこと、現代の生活様式と琴線との関わりについて考えるべき時がきているのではないだろうか。優しく、慈愛に満ち、道徳心に富んだ人々が、生きててよかったと思える世の中が、人間の世の中だと思っている。 ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹 |
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