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 今年のぶどうは大変だ! 天候が悪い。
 五月の連休のあたりは良く晴れた日があったが、その前後はくもりや小雨の日が多く、低温と日照不足が続いている。
 初夏の訪れとともに、固かったぶどうの芽も徐々に膨らんで、やがて握った手のひらを開くように小さな葉っぱがひろがる。これを「展葉(てんよう)」という。
 展いた葉が日毎に大きくなってくると、芯が伸びだす。この芯に二〜三個の花芽がつく。花芽はぶどうの形をしたブロッコリーのよう。
 開花は梅雨の始まりのころ。線香花火のような白い可憐な花が咲く。
 花芽のつくころに毎日大風が吹いた。そのせいか花芽は今までになく小さい。柔らかな芽が大風に煽られた影響であろう。
 だが、しかたがない。自然のことは、人間の力ではどうにもならない。
 秋の、よりよい収穫をめざし、与えられた状況のなかで、最善を尽くすしかない。
       ●         ●
 この一年間、福井県の池田町というところに通った。池田町は福井県の東南部、岐阜県との県境にある人口4千人弱の町。
 町勢要覧の表紙には、
「あたりまえがふつうにあるまち」と、ある。
 町を囲む山の手入れが美しく、古い立派な神社がいくつもあったり、田楽・能舞などの伝統文化が今も息づいている歴史深い山里だ。
 町にはコンビニが一軒もない。信号機は一〜二ヵ所あるらしいが自分はまだ通ってない。
 なにより驚いたのは、「セイタカアワダチソウ」が一本も生えていないこと。外来のあの草はいまや日本中どこにでもあるのに、池田町には一本もない。聞けば大人も子供も芽を見つけたらすぐに抜いているとのこと。

農村力デザインを考える  昨年は環境大臣賞を受賞した。有機農業や生ゴミ・空き缶といった環境問題で、地道な地域の活動が評価されたのだ。
   他所から訪れた自分からみると、池田町は、「あたりまえではないことがふつうにあるまち」…で、感心することばかりである。
 池田町に通った理由は、昨年七月、ここに、「日本農村力デザイン大学」が開校したから。
 池田町はもともと、行政と住民による、NPO法人の「農村力デザイン研究所」というのがあって、そこから大学が生まれた。
 昨年一月、早朝のラジオで大学開校のことを知った。
 「農村力デザイン」…なんと素晴らしい言葉か。この言葉に斬新な発想と限り無い可能性を感じて胸が高鳴った。すぐにネットで内容を確認、そして受験。
 授業は二ヵ月に一回。一年間。「風の課」「土の課」「美の課」「人の課」の四課を、二泊三日の合宿で勉強した。
 教授陣は豪華メンバーで、ふつうこの先生方の教えをうけるには、福井、東京、宮城、熊本、東芸などの、大学または大学院に入学するしかない。が、池田の大学では、座してそれらの先生方に教えていただけた。
 「農村力デザイン」という思想を学び始めると、考えた以上の奥行があって、簡単には学びきれない、ということがまずわかった。
 農村力という「力」は、農村の長い歴史のなかで、さまざまな人や地域の知恵や伝統などで培われてきた。
 農村は、ただ単に食料を生産するだけではなしに、食を通じて人々の健康や生命を守り、循環による環境を守り、文化や伝統を守り育てることなどに大きな貢献をしてきた。その過程で集約されたさまざまなエネルギーが、農村の力として蓄積され継承された。
 この力が、現代においては、人と社会を治癒する力、活性化する力として、活用できるのではないか、そのためにはどうすべきか、というのが「農村力デザイン」という考え方だと思う。ここまでがやっとで、まだまだ未消化。多くの課題を残したまま一年が終わってしまった。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹


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