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 長かった梅雨がようやく明けた。
 いままでずっと畑を覆っていた厚い雲が、まるで手品のようにどこかに消えた。
 かわって、遠くの明るい海の色を映したかのような、真っ青な乾いた空がどこまで も、涼しげにひろがっている。
 ところどころに、白いペンキで刷いたような雲がうかび、緩やかに変化しながら、 ゆっくりゆっくりとながれている。
 輪郭を白金色に燃えたたせた太陽からは、強烈な夏の光が、畑のすみずみにまで降 りそそぐ。透明な陽光は、あたりの景色を際立たせ、畑土にぶどうの影をくっきりと 刻む。
 こんな光景はほんとに久しぶりだ。
 ルンズの畑にとっては、見慣れた、あたりまえの光景なのだが、くる日もくる日も 続いた梅雨空のあとでは目が洗われる思いだ。
「さあ、がんばるぞ」
 明るい日差しに励まされ、畑に向かって、声を出して作業にかかった。
 が、すぐに愕然とした。
 ぶどうや畑から伝わる感触は、いつものような、身体が覚えこんだ感触ではない。 見た目は燦々たる陽光に明るい畑だが、長雨と日照不足のぶどうは大きなダメージを うけていた。
(う・・・なんとかしなくちゃ)と、思う。
 しかし、すぐには対策が思いつかない。
 こうなることも予想して、それなりの対策はとっていたのだが・・・。
 そのうちのひとつに、畑の草を刈らない、というのがあった。
 それについては、こんな笑い話がある。

地球が壊れていく  ある日、自分が畑を留守にしている時、近くの街に住む友人が訪ねてきたらしい。 その友人は草ぼうぼうの畑を見て、かつてない畑の様子に驚いた。そのころは草だけ でなく、ぶどうの芯も勝手放題にのびていて、まあ、ちょっと見は、悲惨な状態だっ た。
 重い雲の垂れこめた、荒れ放題(に見える)の暗い無人の畑を目にした友人は、 「あれれ、夜逃げしちゃったかな」と、思ったらしい。
 友人間にこの話が伝わり、噂となってずいぶんあちこち駆け巡ったようだ。
 この話が自分の耳に入ったときは、おかしいやら哀しいやらでずいぶん複雑な心境 になったものだ。
 草を刈らなかった理由は主に三つある。
 (多量の雨に対して)表土を流さないため。余分な水を草に吸ってもらうため。土 中の酸素不足を防止するため。

 それにしても、最近の雨の降り方は変化してきたように思う。ある地域に集中的に 豪雨が降る、そういう現象が増えている。
 雨は、地球の水分の循環システムのひとつの現象・・・として考えると、地球上で われわれ人間が水を消費すればするほど、その分はそっくり雨というかたちで天から 降ってくる、つまり循環されるのではないだろうか。
 だとすれば、水の消費量とスピードが倍増している今日、それに比例して雨の降り 方にも勢いが増すと考えるのは、どうか・・・。
 森林の伐採や大地の砂漠化など、それぞれがうけもつ地球の循環システムの損壊が 云われて久しい。地球環境を壊す構造的な要因については他にもたくさん報告されて いる。しかしそれが改善されているという報告はない。
 集中豪雨のニュースを聴きながら考えた。
 もしかしたら、今は、地球住民が、とくに質量ともに消費を享受している人々が、 地球環境の維持について、真剣に考えなければならない、最後にちかい機会かもしれ ない、と。
 とは云え、自らを振り返ると、環境を考えている畑だ・・・といいつつも、作業に は化石燃料を使用したトラクターや作業機を使っている。
 地球環境を自然のまま維持することは、地球住民にとって絶対やらねばならないこ とだけど、途方もなく難しい。間に合うだろうか。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹


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