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 雲のかたちや風の音に、秋の気配が漂うある朝、ぶどうをついばむ十数羽の鳥の群 れを見つけた。
 困ったことになったぞ…と思いつつ見ていると、二〜三羽ずつが、弾むような飛び方 で、あっちこっちからやってくる。数羽が、後になり先になりながら、庭の木や畑の クヌギに止まって、様子をみいみい、恐る恐るぶどうに近づいていく。そのしぐさが とても微笑ましく、(いいよ、少しぐらい食べても…)なんて思ってしまう。
 ところが、常習者とみられる鳥がいて、単身すごいスピードで飛んできて、ダイレク トに枝に下り、サッとぶどうに喰らいつく。その様子は、勝手知ったる人の家といっ た調子。まわりも気にせず傍若無人の振る舞いで、次から次へと大事なぶどうを喰い 荒らしていく。
 怒り心頭。(ヤキトリにして食ってやる!)
 この時ばかりは、「万物共生」の心がどこかに吹っ飛んでしまった。
 雀よりもずっと大きくて、鳩よりはずっと小さい。
 色は、茶のかかった灰色のように見えるが、朝のひかりのせいかよくわからない。尾 がからだの半分ほどあって、枝に止まる時などには、姿勢防御の役目などするのか、 手のひらを広げたように尾羽根が広がる。
 あとで気がついたのだが、さえずりの声の覚えがない。あまり、さえずらない鳥かも しれない。もっとも、まわりの鳥たちの声が姦しいので聞こえないのかもしれないが。

新たな敵?出現  どうもムクドリかカケスらしい。
 作業後の汗を流す温泉で、親しい村人に鳥の名を聞いたところ、多分…という前置き があったが、そう教えてくれた。
「とうとう鳥に見つかっちまったかや…」
 村人は、湯に上気した顔を、大きな両手でツルッとなでながらそう言った。
 今年は天候不順でぶどうの作柄には不安がある。万物共生とはいえ、このうえ、鳥た ちに勝手放題に喰い荒らされてはちょっと困る。
 今度は、赤城にきて以来、親しくしていただいている家に行って相談した。
「猛禽類がいい。鷹か鷲だ」
 小鳥たちの天敵を畑の上に飛ばしたらどうか、ということだった。もちろん、本物と いうわけにはいかないから、作り物の偽せ鷹か、鷲。偽猛禽によって恐れさせ、畑に 近づけさせないようにする作戦だ。
 三年前、初めて実ったぶどうを喰い荒らしていたカラスとの戦いがあった。
 数日にわたって、日の出前から物陰にひそみ、双眼鏡でカラスの手口を観察した。子 細に観察するとリーダーがいる。リーダーが率先し、リーダーの指示で他のカラスが 行動する。行動にも、なんとなく納得できるパターンというか理屈があって、あらた めてカラスの賢さを知った。
 観察結果をもとに作戦をたて、周到なカラス撃退戦線を張った。結果は大勝利。一回 の戦いでカラス軍団を撃破した。その敗戦の痛手を覚えているのか、その後、いまだ にカラスは悪さをしにやってこない。
 今度の、ムクドリだかカケスだかは違う。
 行動になんのパターンもなく、各自それぞれ好き勝手にやっている。なにも考えず、 ただ本能のおもむくまま…。あっけらかんなのだ。
 こういう手合いはやりにくい。策をもたないから、対抗の策の打ち出しようがない。 まずは、鳥類図鑑でムクドリかカケスか、それとも他の鳥か、確認しよう。相手が何 者かわからないでは、作戦も戦いもあったものではない。
 その一方で、鷹か鷲を大至急作ろう。天敵の猛禽で脅す策は、相手が無策のあっけら かんだけに、なんとなく的を得た上策のような気がする。幸い、近くに器用な友人が いるので、相談すればなんとかなるだろう。
読者のみなさま、この攻防の結末をどうぞお楽しみに。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹


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