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 スズメ、メジロ、ホオジロ、ヒヨドリ。このところまいにち、ルンズの畑に来訪す る面々である。
 前月にひき続いて恐縮だが、今回も鳥の話をお伝えしようと思う。
 今までの秋で、こんなにも鳥たちがやってくることはなかった。天候不順の影響で、 この辺りの、山野の木の実が不作なのに違いない。
 鳥たちは、嬉しそうに声高にさえずりながら、弾むように、連れ立ってやって来る。
 彼らは、飛んで来ると、とまどいの様子も見せずに畑の一点に降り立つ。
 すぐに、鬼ごっこのように、ぶどうの梢から梢に飛びまわり、楽しそうに遊び始め る。
 ひとしきり遊びまわると、狙い定めた樹に集結し、群がってぶどうを食べる。チュッ チュッ、チュッチュッと鳴きながら、美味しそうに食べる。満腹すると、サッとまた 飛びたって、何処へともなく去っていく。
「エッ、こんなに食べられちゃうの?!」
 先の日曜日、ボランティアに来てくれたNさんが、数えるほどしか実の残っていない、 ぶどう樹を前にして驚いていた。
 数羽から数十羽で連れ立って来る鳥たちは、1〜2本の樹に群がり、あらかた食べ尽 くす。1回に食べるぶどうの量は、およそ1キロ。
 少し遠慮してもらうために、本気になって対策を考えた。
 よく晴れた秋の一日。いつものボランティアの協力で、畑の周囲と上空に、防鳥糸 を張りめぐらした。その糸に、キラキラ光る金銀のテープを3〜4メートルおきにぶら 下げる。張りめぐらせた糸の長さは、1万メートル近くにもなった。

新たな敵? 出現 その2  ぶどう見の丘に、竹藪から伐りだした長い竹を立て、竹の先に作りものの大鳥を、 あたかも宙を飛んでいるかの様に吊った。
 この大鳥には目が3つ。金のビラビラがたくさんついていて、御神興のてっぺんに鎮 座する、鳳凰のようにも見える。この異様で小鳥たちを威嚇しようという算段である。
 大鳥は、ときどき畑を手伝ってくれる、飯塚裕子さんが作ってくれた。イラストレー ターが本業だが、こうした作りものも上手なので、わけを話して依頼した。
「この鳥は、鷹、鷲?」という質問に、
「ウーン、図鑑を見て作ったんだけど、…」と、よく分からない返答だったが、青空に うかぶ雄姿に、皆が満足した。
 防鳥の仕掛けは満艦飾のようだ。効果については、今後を観なければ分からないが、 上々の出来である。
 しかし、自分の心は重く暗かった。理由がある。
 その日の朝だった。早朝に起きて、防鳥作業の道具を揃え、点検していた。その時、 小屋の中のラジオから鳥の声が流れた。「ヒヨヒヨ」と聞こえた。その声は毎日畑に 来ている、今までは、ムクドリかカケスと思っていた鳥の鳴き声と同じだった。ラジ オから離れていたので、聞きにくかったが、アナウンサーの話で、その鳴き声の鳥は ヒヨドリと知った。
 聞き耳をたてていると、ヒヨドリは、もう間もなく南の方に渡るとのことだった。 日本の何処かは聞き漏らしたが、いよいよ海を渡るときは、断崖絶壁から飛び立つの だそうだ。その時急降下して、波飛沫を浴びるほど海面すれすれに飛ぶとのこと。そ うしないと待ち構えているハヤブサの餌食になってしまう。その必死の光景を見てい ると涙が出る、と、アナウンサーは説明していた。
「そうか、これから海を渡り、危険を冒して遠くの土地に行くのか…。そのために今、 一所懸命にぶどうを食べているのか…。」
 考えるほど、切なくなった。哀しくなった。手元の仕掛けをじっと、見つめる。
 自然の中で、人間の取り分と、他の生き物たちの取り分と。百姓は、ときにつら い…。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹


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