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 厳しい冷気の中、パチッ、パチッと、乾いた剪定鋏の音が響く…。と、今回はこのよ うな書き出しを予定していた。
 ところが。
 今の時期、畑では剪定作業が続く。毎日、朝から晩まで枝を切る鋏の音が、抜ける ような蒼い空に、パチン、パチンと響いている。しかしその音が、今冬は微妙に違う。 少し湿っている。きっと樹も空気も乾ききっていないのだろう。原因は暖冬と思われ る。この冬の暖かさは異常だ。
 一昨日の朝、温度計が最低気温マイナス8度を示していた。この冬では今のところ一 番の寒さ。次に寒かったのは、もう2〜3週間前で、マイナス7度。あとはマイナス4 〜5度を上下する日々が続いている。
 ある朝は寒中というのにプラスだった。もっともこういうことは今までにもなかっ たわけではない。なにかの関係で、こういう暖かい朝もたまにはある。
 赤城にきて畑を拓いてから数年の間は、もっと寒かった。日記を読み返しても、確 実に今より3〜4度低い。ずいぶんな違いである。
 マイナス10度前後の朝が数日間続いた記録もある。マイナス15度というのも。この 記録は今のところ破られていない。地球の温暖化が進むと、もしかしたら永久に、こ の数字を越える寒さの朝はやってこないのかもしれない。
 暖かいだけではない。雨雪が極端に少ない。
 今年に入ってから降った雨は、パラパラという程度が一回。もちろん雨具なんかい らず、そのまま作業が続けられるほどの、小雨とも言えぬものだった。

予言
 雪は続けて二回降った。
 七草のころ、未明から降り始めた雪が昼前まで降って、4〜5センチ積もった。畑も 小屋の前のデッキも一面真っ白。これが今冬の初雪である。しかしその雪もその日の 暖かさですぐに融け、翌朝まで残ることはなかった。
 翌日は朝から上天気。作業中シャツを脱ぐほどの暑さになった。が、昼頃、俄に榛 名の方向から灰白色の雲が覆い被さってきた。(なんだ、なんだ?)と思っているうちに みるみる冷え込み、花びらほどの雪が強い風とともに吹きつけ、猛吹雪になった。2時 間ほども荒れ狂い、突然、さっと降り止んだ。9センチの積雪だった。
 4〜5センチ積もった、9センチ積もった、と書くと、「結構降ってるじゃないか」と いう感じがするが、例年の「降雪」の印象とはなんとなく異質なものがある。なんと いうか、芝居の小道具のよう…なのである。この冬の、寒さの質と底が違う、と思えて ならない。
 農業をやっていると天候についての心配事はついてまわる。今の心配事は二つ。
 このところ降らない分の雨は、何時、どのように降るのか? と、こんなに明るく暖 かい冬なのだから、夏は、暗く冷たくなるのではないだろうか? ということだ。
 以前にも書いたが、天候はバランスする。
 毎日畑に出て、人間にはどうにもならぬお天気を、肌身で感じ、喜んだり嘆いたり していると、それがよくわかる。
 福井県池田町。ここで昔から続いている農の神事「寒だめし」で、この夏は、「雨、 冷たい」とあり、穀物類は大不作と出たそうだ。
 当たる…と思う。寒さがなければ山に雪も積もらない。山の雪が春以降、田畑を含め 大地を潤し、自然界のバランスを保つ。
 雨の多い夏ならば、太陽の恵みは薄い。春先の水と夏の日照が不足とあらば、作物 への影響は必然である。
 ルンズ・ファームもしっかりとやらねば、この夏は乗り切れないだろう。
 樹、天、地をよく見、洞察し、先手、先手の対応を心掛けねばならない。
 そうしなければ、無事夏を越え、秋の実りを手にすることは難しい。そのことを、 今、剪定の音が教えてくれている。

ルンズ・ファーム代表: 永澤 徹


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