|
ぶどうは人のこころを癒してくれる。
ぶどうの畑は、訪れる人々をいつでもあたたかく迎えてくれる。
ぶどうの畑に佇むと、ホッとする安らぎが、こころもからだもつつんでくれる。
人生の多感の頃、たいせつな節目の時、わたしは三度もぶどうと出会えた。
この幸せは、誰に感謝をしたら良いのだろう。
「ボォボォーゥ」遠く汽笛が聞こえる。
「汽車だ! 汽車がきた!」
耳聡い子供等は、それまで夢中だった遊びを放り出し、我れ先に背伸びして遥かな線路の彼方を見る。
透明な陽炎のなかに、黒い煙と機関車が、フワァフワと揺れながら浮かび上がって、駆けてくる。
やがて大きな汽笛とともに、目の前を轟々と走り抜け、また陽炎の中にゆらゆらと去って行く。
宮城県の、海に近い伯母の家。
家の前の、どこまでも続く線路に沿って、伯母一家が育てるぶどうの畑があった。
夏の強い陽差しが、ぶどう棚の葉や、まだ青い実に降りそそぐ。
その下の、砂地の白い土には、葉っぱ形の白黒かげ模様がくっきりとついている。
その密度の濃い日陰で、子供らも白黒模様に染まりながら、ムシロを敷いて一日中遊ぶ。
時折、乾いた涼しい風が吹き抜ける。
キビキビと働く姉さんかぶりの若い伯母。
まわりには大勢のイトコたち。
母に連れられて行った、幼い夏の日の、懐かしい思い出。
ぶどうとの初めての出会いでもあった。
|